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赤の薬と青の薬

「これは最後のチャンスだ。先に進めば、もう戻れない。青い薬を飲めば、お話は終わる。君はベッドで目を覚ます。好きなようにすればいい。赤い薬を飲めば、君は不思議の国にとどまり、私がウサギの穴の奥底を見せてあげよう」


 モーフィアス 『マトリックス』



This is your last chance. After this, there is no turning back. You take the blue pill – the story ends, you wake up in your bed and believe whatever you want to believe. You take the red pill – you stay in Wonderland and I show you how deep the rabbit-hole goes.
Morpheus

おはよう、セカイ。

この世は奇々怪々で満ち溢れている。ジリジリと鳴り響くけたたましい音と共に目を開ければ新たな世界は始まる。そして終わりには静寂に包まれながら目を閉じれば世界が終わる。

この世とあの世の境はいったいどこにあるのだろうか?
そもそも私たちは、この世をどこまで認識できているのだろうか?

映画マトリックスでもあるように、もしかしたらこの世は仮想現実かもしれない。

そんな俗説がある。世界シミュレーション仮説だ。
哲学者ニック・ボストロムは、科学的な証明を試みて、この世はほぼそうらしいと結論づけた。
もちろんその学説にも疑義があるとしても、あなたはどこまでそのことを信じるだろうか。

もし仮に仮想現実があるとしたら、あなたは仮想現実が作った世界に行きたいと願うか。

この世だけを現実だと認識している我々は、他世界の存在を理解できないままでいる。それは、他世界との繋がりがないからに他ならない。

もし他世界に友達がいるという話になれば、その現実を容易に直視できるのだろう。しかし現実、そんな話をし出したら、ただの変なやつだ。

結局、人間はそれまでに形成された価値観をもとに判断し、決断している。

そして歳を取れば取るほど、その価値観が変えられないのもまた事実だ。価値観から外れることがあれば、理解に時間がかかった経験がある人も多いだろう。しかし、世界は変わっていく。昭和の時代には想像でしかなかった仮想現実の社会。それが、メタバースをはじめ着実に社会実装されている。

きっと、現実世界にベースを置いている人にとっては、所詮ゲームの世界と揶揄するのだろう。しかし仮想現実にベースを置いている人にとっては、そこがこの世の主戦場だ。

この世を仮想現実だとして、ゲームにログインする感覚で生きるのも悪くない。

ただでさえ、幸せと苦しさあふれる社会だ。体の痛みも心の痛みもリアルに感じる。食欲や性欲が満たされるならそれで満足感が得られる。そんなことまでゲームのように楽しんだらいい。そうしたら現実に対する悲観も少し和らぐのではなかろうか。

とても生物的で素晴らしい。逆に欲求や感情を持たない人間は、Chat GPTとさほと変わらないまである。人間であり続けるが故に仮想世界に行きたいと思えるのだ。
人間を人間たらしめる性質は、最終的に生物的な領域に基底されているのかもしれない。

黒服が現れて、赤と青の薬を差し出されたら、私はガンダで逃げ出すのだけれど。

さよなら、セカイ。

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